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紅の詩 《Notes of a Melodic Choice》

器のポエジーがコスモスを見つめる。紅輪のディレクター〈イオ・リリック〉による詩、ショートストーリー、日記の定期連載「紅の詩」。第2回。

 


 

《Notes of a Melodic Choice》

 

「巨峰とマスカット、どっちがいい?」

 

女が二粒を差し出すと男は迷わずマスカットを摘まんだ。

 

「あっそう。簡単に選ぶのね」

 

男はレコードに目を向けた。

 

確かにフルートは美しかった。

 

ミステリアスだし、息を奪われたことも二度三度ではなかった。

 

それに比べてクラリネットは気楽なものだった。物分りが良すぎた。

 

だが、いつまでも懐かしかった。

 

共に過ごすならクラリネットに違いなかった。

 

健やかなるときも。
病めるときも。
喜びのときも。
悲しみのときも。

 

「どうもお粗末さまでした」

 

女は皿を下げた。

 

「レーズンでも作ろうかしら。まだ余っているから」

 

男は表情を崩さずに答えた。

 

「なら巨峰を忘れないでくれよ」

 

 

【自作解説】

 

最初の部分で、男性がマスカットを選ぶことは、彼の内面を象徴的に表現しています。マスカットは甘くて繊細な果物であり、男性がそれを選ぶことは、「女性」との関係に求める柔軟性や繊細さを示唆しています。

 

男性はフルートとクラリネットを比較します。フルートは美しく神秘的であり、男性にとっては感動的な経験をもたらします。一方、クラリネットは気楽で懐かしいものであり、男性にとっては安心感や親しみを感じさせます。これは、男性が女性との関係において、感動的な瞬間と日常的な安定感の両方を求めていることを示唆しています。

 

 男性の内面には葛藤や懐かしさがあります。彼は登場人物の女性との関係を大切に思っており、彼女の提案に敬意を払っています。しかし、同時に、彼の心の中では過去の思い出や感情が交錯し、複雑な気持ちを抱いているようです。

 

 

 

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