北欧陶磁器の生い立ち
機能美に支えられた静かであたたかな佇まいを見せる北欧の陶磁器。
と言った途端、北欧の陶磁器の多彩な魅力の数々を言い漏らしてしまいます。
心を奪った陶磁器が、調べてみると北欧のものであったこと、たびたびありませんか?
今回は北欧諸国の陶磁器、陶芸について、沿革をわずかながらですが記してみます。
デンマーク
磁器・陶器生産の歴史が東アジアに比べると格段に若いデンマーク、その歴史はわずか200年ほどしかありません。
しかし中国や日本の陶磁器、炻器(ストーンウェア)のフォルムや釉を北欧諸国の中で、最初に消化し再び自分たちの美術工芸品として確立したのはデンマークでした。
ロイヤル・コペンハーゲン(1775-)やビング・オー・グレンダール(1853-1987)といったファクトリーは1900年代から陶磁器制作と並行してストーンウェア制作を行いました。
また、数多くの個人作家のスタジオや小規模なスタジオ・ファクトリーで、東洋陶磁の影響を色強く感じさせるものから個性豊かな陶彫まで、幅広い作品が生まれます。
テーブル・ウェアの分野でもアール・ヌーヴォー・スタイルを経て、第一次世界大戦以降は機能主義的で無駄のない造形とごく簡素な装飾を志向するスタイルへと変化しました。
陶芸においても大量生産品においても、素材への理解と理知的な造形で今日でもモダニティの息吹を保ち続けています。
スウェーデン
1845年に設立されたスウェーデン工芸協会は、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動、またドイツ工作連盟の思想に大きく影響を受けたデザイン運動団体です。
「より良い製品を一般市民の生活へ」をモットーに芸術と産業の協働を積極的に推進しました。
スウェーデンでは1890年代頃からガラスと陶磁器が主な産業となっており、これらのファクトリーへデザイン向上のためにアーティストたちが招かれていきました。
レルストランド製陶所(1726-)やグスタフスベリ製陶所(1825-)ではファクトリー内に陶芸スタジオを設け、デザイナーたちのクリエイティブな創作意欲を奨励しました。
衛生陶器を含むセラミック・デザインを手掛けつつ、一方では一点制作の陶芸作品を制作するという、デザイナー兼アーティストが多いのもスウェーデン陶芸の特徴です。
陶芸作品は東洋陶磁はもちろん、古いヨーロッパ陶磁等からもインスパイアされた想像力にあふれたものが多いです。
また、大量生産品は軟質磁器であったり高火度焼成陶器であったりボーンチャイナであったりと素材は様々で、フォルムが合理的かつデザイン性に優れた多くの作品があります。
ノルウェー
デンマーク、そしてスウェーデンに長く同君連合という名目で支配されていたノルウェーが独立したのは1905年のことです。
そのような政治的背景もあって、他の北欧諸国に比べてノルウェーの近代工芸は第一次世界大戦以降にようやく独自の路線を歩み始めました。
ノルウェーを代表する製陶所、ポルシュグルンでは当初ドイツのマイセンやデンマークのロイヤル・コペンハーゲンの製品などを手本に制作していましたが、1920年頃からドイツのバウハウスやアール・デコ・スタイルなどを積極的に取り入れ、芸術性を高めていきました。
ドイツ軍による第二次世界大戦での占領からの復興を経て、1950年代半ばになってノルウェーのセラミック・デザインは復活し、ミラノ・トリエンナーレ等で評価を受けるようになりました。
また陶芸作家についても同様で、国立美術工芸学校での養成を経てスタジオで制作する作家が活躍するようになります。
フィンランド
19世紀、高まりを見せたナショナリスティックなロマン主義運動の中で、フィンランドでは絵画・建築・工芸・デザインの個性が交錯しながら独自性を備えた、美術、工芸、デザインを生み出していきました。
1900年パリ万国博会での「フィンランド館」の成功は国際的な関心を惹き、1917年の独立を前に文化的自立に大きな一歩を踏み出す重要な契機となりました。
1873 年設立されたアラビア製陶所は、当初はスウェーデンのレルストランド製陶所のロシア向け輸出品生産の工場でしたが、1916年に資本を分離し、1930年代にはヨーロッパ最大規模のファクトリーに成長します。
第二次世界大戦で国力は疲弊したものの、アラビア製陶所は精力的にデザイン面での改善を行い、やがて陶芸、セラミック・デザインは輸出産業として1950年代を中心に国際的な展覧会で数々の高い評価を得ました。
アラビアはフィンランドの経済復興に大きな役割を果たしたのです。
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「北欧もの」と一括りにできない、またそれぞれの国名一つでまとめることのできない多彩な魅力を放つ北欧の陶磁器。
また改めて細かく深掘りする機会を設けたく思います。
(参考資料 『北欧のやきもの』愛知県陶磁美術館)
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